着物とは、日本在来の衣服のことで、「洋服」に対して「和服」という言い方もします。もともとは、「着る物」全般を指していたようですが、時代の変化とともに、着物=和服という意味合いで使われるようになってきました。
現代の日本において、普段の生活は洋服が一般的ですが、礼装的な意味でいえば、七五三、成人式、卒業式、結婚式など人生の節目に登場してくるのが着物です。また、夏のイベントでは、浴衣を着る若い人たちを多くみかけることも。
しかしながら、なかなか1人で着ることができまず、いざ着てみたいと思っても何から始めていいのかわかりませんよね。そこで今回はそんな着物に着目してみました。筆者自身も着物が好きで、いつか着こなしたいと思っています。多少の知識は持ち合わせていますが、今回のこの記事で改めて勉強していきます!
着物についての基礎知識から、映画を参考に着物のコーディネート例やその魅力などもたっぷり紹介。興味はあるけど、よく知らないといった初心者にもわかりやすく紹介していきます。
着物の基礎知識
着物の種類
着物にも洋服と同じように、目的やTPOにおいて、さまざまな種類が存在します。まずは、そこから紹介しましょう。
着物には、「格」というものがあります。「格」は、大きく4つに分けることができます。最も格の高い「礼装」、略式な礼装の「準礼装」、パーティーなどの華やかな場所での「盛装」、気軽なお出かけ着となる「普段着」です。
この格によって、着物の種類が分かれています。以下のとおりです。
礼装 | 黒留袖 | 既婚女性の第一礼装、すそ部分に模様あり、5つの紋が入る |
色留袖 | すそ部分に模様あり、黒色でないもの、5つの紋付 | |
振袖 | 未婚女性の第一礼装、長い袖が特徴 | |
準礼装 | 訪問着 | 上半身とすそに絵羽模様 |
付け下げ | 訪問着の略式、柄がつながっていないのが特徴 | |
色無地(紋付き) | 無地一色 | |
盛装 | 色無地(紋なし) | 無地一色 |
お召 | 糸を先に染め、よりをかけて柄を織る | |
普段着 | 小紋 | 全体的に模様がある |
紬 | 紬糸を用いて織られた織物、結城紬や大島紬などがある |
帯の種類
着物同様に、帯にも種類があります。合わせる着物によって、その目的が変わるものもあります。帯の種類は大きく3つに分けることができます。「袋帯」「名古屋帯」「半幅帯」の3つです。それぞれみていきましょう。
袋帯とは、袋状に織られています。二重太鼓と呼ばれる帯結びが一般的です。フォーマルシーンに着用する帯で、留袖、振袖、訪問着などに合わせます。
名古屋帯は、胴に巻く部分を半幅にしており、一重太鼓と呼ばれる結び方をします。織りから染めまで幅広くバリエーションがあります。カジュアルシーンに着用する帯で、柄によってはセミフォーマルとしても使用できます。
半幅帯とは、袋帯や名古屋帯の半分の幅の帯のことです。浴衣などに合わせる帯として一般的です。カジュアルに、さまざまな帯結びを楽しむことができます。
和装小物
着物を着る際には、和装小物も必要です。この和装小物には、装飾小物と着付け小物とがあります。この2種の小物について紹介します。
装飾小物とは、帯留めや草履、バッグなどのことを指します。着物でお出かけには欠かせませんよね。一方、着付け小物は、肌襦袢や足袋といった着物を着る際に必要な小物のことです。どんな小物があるのか、それぞれ簡単に明記してみます。
装飾小物
半衿(襦袢の衿につける)
帯揚げ(帯枕や紐を隠す)
帯締め(結んだ帯を押さえる)
帯留め(帯を押さえる)
草履(かかとの高さで用途が分かれる)
バッグ
着付け小物
足袋
肌襦袢(肌着)
すそよけ(着物のすそが痛まないため)
長襦袢(肌襦袢とすそよけの上に着用)
和装ブラ(着物用のブラジャー)
補正パッド(ウエストの補正に)
衿芯(襦袢の衿の形を整える)
腰ひも(襦袢や着物の丈を決めた時に、その長さを維持するために使用)
伊達締め(胸元の崩れを防ぐ)
帯版(帯の前面を整える)
帯枕(帯の形の崩れを防ぐ)
男性の着物
もちろん着物は女性のものだけではありません。男性用の着物もあります。男性の場合、着物と帯だけだけの姿を「着流し」といいます。どこかで聞いたことがありませんか。
男性の着物を長着といい、長着と帯があれば最低限の格好ができます。ただ、この長着に羽織や袴を合わせて外出着とすることが一般的です。
特に袴は、正装や礼装には欠かせないアイテム。もちろん、普段使いとしても着用されます。動きやすくなる上、和装ならではのいで立ちとなります。素敵ですよね。
そのほかの和装小物に関しては、女性と同じように、襦袢、ふんどしなどの和装肌着、腰紐・男締め、足袋、草履などの履物などが必要になってきます。
着物のTPO
ここまで着物の基本的な知識を紹介してきました。ただ、実際の場面では、それぞれどんな着物を着たらいいかわかりませんよね。その目的に合わせて着物を着分けることは、最低限のマナーでもあります。そこで、具体的な場面ごとに紹介します。
結婚式 | 未婚の場合は振袖。既婚の場合は黒留袖もしくは色留袖。帯は袋帯。 |
成人式 | 着物は振袖。帯は袋帯。 |
卒業式 | 着物は振袖、中振袖や色無地(ここに袴をプラスすることも)。帯は袋帯(ただし、袴の場合は半幅帯)。 |
パーティー | 着物は振袖、訪問着、色無地、付け下げ、小紋。帯は袋帯か名古屋帯。 |
お稽古事や観劇など | 着物は小紋、お召、紬。帯は名古屋帯か半幅帯。 |
普段着 | 着物は木綿、化繊、ウール、紬。帯は名古屋帯、半幅帯。 |
着付けについて
着物のことを知れば知るほど、自分で着てみたくなりませんか。最近では、自分の着物を持っていなくても、気軽に手ぶらで着付けが習えるような場所も増えています。たとえば、着物ショップで開催している「着付け体験」があります。
そのほか、着付けだけでなく、マナーなどの教養も身につく「着付け教室」や着付けのプロを目指す「着付師養成教室」など。着付けを習おうとするだけでも、さまざまな選択肢があります。
また、動画配信サイトなどでも着付け方法を提供しているサイトなどもあります。自分で着るのはどうしても難しい人には、自宅まで着付師が来てくれるサービスなどもみかけます。ご自身の目的に合わせて着付けをすることができますよ!
映画を参考に!着物の着こなし
着物について基礎的なところが少しおわかりいただけたかと思います。それでは、具体的にはどんな着方をして、どんな動きをしているのでしょうか。
それには映画作品を観ることがおすすめです。日々の生活の中、お出かけの際、お呼ばれの席などでどんな風に着物を着こなしているのか、コーディネートはどうしているかなど、実際の映像で観るとわかりやすいからです。 着物の種類やTPOなど具体的に参考にできるおすすめの映画作品を紹介します。
映画作品でみる着物
日日是好日(2018年)
エッセイストの森下典子が自身の経験をもとに綴ったエッセイ『日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』が原作の映画です。黒木華主演で、樹木希林や多部未華子が共演しています。
20歳の典子がいとこの美智子に誘われるまま、樹木演じる武田先生の茶道教室に通うことに。茶道を習いながら、その後20数年にわたる典子のさまざまな経験を描いた物語です。
樹木希林の着物姿も素敵ですが、お茶の席では、色とりどりの着物を鑑賞することができ、非常に参考になります。黒木華が演じる年齢に合わせて、着物も変化していくところが特に注目です。
小さいおうち(2014年)
第143回直木賞を受賞した中島京子原作の同名小説の映画化です。昭和11年、田舎から東京郊外に立つ小さい赤い三角屋根のおうちで女中として働くことになる布宮タキ。60数年後のタキが自叙伝を書くこととなり、その当時のことを回想していくという物語です。
モダンな家におしゃれな時子。時子の着物も素敵なものばかりです。タキの素朴な着物も非常に可愛らしく魅力的。生活の中で、着物を着こなしている様がよくわかります。作中、時子の帯に関するくだりは特に注意してみてください。
椿の庭(2021年)
写真家の上田義彦の初監督作品。脚本も上田本人が手掛けています。主演は冨士純子とシム・ウンギョン。共演に鈴木京香、田辺誠一とベテランが名を連ねています。
長年連れ添った夫を亡くした絹子を冨士純子が演じ、その孫・渚をシム・ウンギョンが演じます。1人になった絹子と一緒に暮らすことになる渚。しかし、その思い出の詰まった家を手放すことになるのですが……。
絹子が着付けをしながら、鈴木京香演じる陶子と話すシーンは話題に。冨士のその所作の美しさに惚れ惚れします。着付けの参考にもなりますよ。
女優でみる着物
みなさんは着物の似合う女優というと誰を想い浮かべますか。ここでは、映画女優として多くの作品出演し、艶やかな着物の姿をみせている吉永小百合に焦点を当ててみました。
デビュー作から、これまで出演した映画作品は実に120本以上。時代劇はもちろんですが、それ以外でも着物姿で出演している作品も数多くあります。作品の中だけでなく、テレビ番組への出演時や映画祭、舞台挨拶などでも着物姿で登場することは多く、素敵な着こなしは話題になることも。
往年の女優・田中絹代を演じた『映画女優』では、着物姿で体当たりの演技をみせてくれました。また、市川崑監督の『細雪』では、三女の雪子を可愛らしい着物で演じています。そのほか、『長崎ぶらぶら節』では、江戸から明治にかけて生きたある芸者を演じました。その都度、登場する着物姿の美しさは必見です。また、着物を着た時の所作も気になるところ。ぜひ参考にしたいものです。
衣装担当でみる着物
今回、おすすめしたい衣装担当は宮本まさ江。これまで多くの映画作品の衣装を担当してきた大ベテランです。映画作品でも紹介した『日日是好日』の衣装も担当していました。
もちろん、着物に限らずどんな衣装も担当している人ですが、今回は着物を使用している作品を紹介します。宮本まさ江が衣装を担当する作品の中で、特に印象的な映画が『夏の終わり』です。
主人公を満島ひかりが演じ、その相手役を小林薫が演じています。この作品は、満島が着る女性の着物だけでなく、小林が着る着流し姿も印象的。2人が真っ白な着物を着て並んで歩く姿は、大人の色気たっぷりです。着物としては、満島の帯の合わせ方も秀逸。このシーンでは、2人の親密さを表現するだけでなく、着物本来の魅力も引き出されています。
宮本まさ江の衣装担当作品では多くの作品で着物を扱っていますが、おすすめな映画に『夢二』『HOKUSAI』『信虎』などがあります。
着物を気軽に購入するには?
着物を購入するには、いくつかの方法があります。まずは、デパートや各地にある着物ショップ(呉服屋)に足を運ぶことです。
全国的なチェーン店から個性的な個人店まで幅広くあります。そういったお店にいる人は着物のプロフェッショナルです。初心者でもいろいろと丁寧に教えてくれます。ただ、お値段はピンキリで、高級着物からアンティークなどさまざまです。
これ以外でも、知識さえあれば、ネットオークションやネット通販などを利用することができます。こちらのメリットはリーズナブルな価格帯の商品もあるということ。デメリットは直接商品を確かめることができないことです。
予算や目的に合わせて、どんな方法で購入するか考えたいところです。また、あまり着る機会がない場合は、レンタルという方法もあります。商品によっては、こちらもリーズナブルに抑えられることでしょう。
ネットオークション
ネットオークションで着物を購入するには、ヤフーオークションをはじめ、さまざまなオークションサイトがあります。ネットオークションでは、驚くほどの低価格がついていることもしばしば。ただ、通常のネットオークションよりも注意しないといけない点もあります。特に着物の場合、ひとつひとつサイズが違うということです。アンティークものですと、帯に関しても、現代のものよりも短い場合がありますので、とにかくサイズを細かくチェックすることが大切です。
ネットショップ
気軽に着物を購入する際には、ネットショップを利用することも便利です。大手着物ブランドが運営するものからこだわりのセレクトショップまで数多くのネットショップがあります。どのお店を選んでいいのか、なかなかわかりにくいですよね。
もし最初に選ぶのであれば、大手サイトにあるショップから選ぶというのもひとつの選択方法です。着物セットとして初めてでもわかりやすい売り方をしているお店もあります。その際には、次のことに気をつけましょう!
- 予算を決めて、その価格帯の商品がおいてあるショップにする
- 新品かリサイクルにするか決めて、それぞれの専門ショップを選ぶ
- 自分のサイズを知っておく(サイズに関しては、下記サイトに詳細が!)
ネットオークションやネットショップでは、最初のうちはサイズなど失敗してしまうこともあるかと思います。その場合の対処法をまとめたサイトもあるので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、着物の基礎知識から参考映画、購入方法までを一気に紹介しました。最初は、いろいろ戸惑うこともあるかもしれませんが、慣れてしまえば、きっと素敵な着物ライフを送れることでしょう。ちょっとしたお出かけや観劇、パーティーなど選択肢に着物を加わるとコーディネートの幅も広がります。まずは第1歩から、初めてみてはいかがでしょうか。