「アートとは何か」を語れるほど、僕はアートについて何も知らない。興味あるアーティストや展示があるときに休日に美術館や博物館に行く程度だし、音声案内を聞きながら「ふむふむ」と分かった気になってるレベル。
バンクシー、バスキア、ウォーホル、ゴッホといった誰でも知っているようなアーティストがただただ好き。俗にこれをミーハーという。
そんなミーハーな僕が大好きな現代アーティストにKYNE(キネ)さんがいる。福岡を拠点に活動している日本人アーティストで、彼の作品はアートマーケットでは販売価格の10倍以上で取り引きされていたりする。
KYNEさんの作品を初めて見たとき「KYNEの描く女性独特の表情」を見て僕は一瞬で虜になった。アンニュイな表情は僕の視線を釘付けにした。神秘的という言葉がピッタリで、「この子は何を考えているんだろう」「どんな気持ちなのか」と深く知りたいという探究心をくすぐられたのだ。
ミーハーな僕がKYNEさんについて語るのはおこがましい。が、好きなんだから仕方ない。もっともっと広まってほしいし、日本にはこんなに素晴らしいアーティストが若手でいるんだってことを知ってほしいのだ。
KYNE(キネ)とは?
KYNEは、福岡出身の福岡を活動拠点にしているアーティスト。1988年生まれで大学時代に日本画を学び、2006年頃からアーティストとして活動を開始。
もともとは人物デッサンに興味を持っていて、ストリートアートとしてスプレー缶で写実的な人物画を描いていたよう。日本画を学んだことでそのエッセンスをストリートにアートに落とし込もうと、平面の世界観でモノクロの人物画を描くようになる。そのポートレート画をステッカーにして、あらゆる場所に貼っていくなかで認知度が上がり、活動拠点である福岡のストリートから人気が出る。
このグラフィックアートは『KYNE girl』と呼ばれ、福岡の街なかを歩いていると至るところで目にすることになる。
現在のようなクールな表情の女性を描くスタイルは2010年頃に確立。80年代のポップカルチャーからインスパイアされた作風で、日本のみならず海外からも注目を集めている。
KYNE《Untitled》2020年
2020年には福岡市美術館に幅約13メートル、高さ3メートルの巨大な壁画ペインティングが展示された。これは美術館側が「(コロナにより)いろいろなことを諦めないといけない中、何か新しいことがしたい」とKYNEに呼び掛け、直筆壁画を実現させた。
来年いっぱいまで展示されていて、モノトーンで描かれているこの女性はガラス張りの美術館の外から見ることができ、コロナで外出できない心情を表されている作品になっているとのこと。東京からは遠いため気軽に行くことができないが、もう少しコロナが落ち着いたら生で見たい作品である。
作品について
白い壁いっぱいに描かれるのは、横たわり、窓の向こうを眺めている女性です。KYNEは本壁画制作にあたり、「公共性と自由」というテーマを設定しました。美術館も大濠公園も公的な場所。公共とは、自由とは何か。この人物はそんなことを考えているのかもしれません。
引用:福岡市美術館 – KYNE《Untitled》2020年
展示:2020年9月9日(水)〜2022年12月27日(火)
KYNEの代表作
ここではいくつかKYNEさんの代表作を紹介する。全てが代表作といっても過言ではないのだが、あくまで私個人の好きなモノを代表作品とさせていただくのであしからず。
①『Untitled(2018/coffee)』
KYNEさんの人気作は、Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) の2018年4月号の表紙になった女性とCOFFEEとの作品。
100枚限定制作としてシルクスクリーンで販売された。
アート作品共同保有プラットフォーム「ストレイム(STRAYM)」でも共同保有権の販売を行っている。100円から購入できるようになっていて、最近こういったアートを共同保有できるサービスが増えつつある。アートを持ちたいが高くて購入できない、という人はここから初めてみるのもオススメする。
②『Untitled(2020)』
2020年に渋谷にできた商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」内にあるアートスペース「SAI(サイ)」がオープンした際、KYNEさんの東京で二度目となる個展「KYNE TOKYO 2」が開催されたときに発表された作品。
それまで背景が描かれていなかったKYNEさんにとって初の試みとなる今作品は、人気のブルーを使って描かれていてアートギャラリーでも高い価格帯で取引されている。
③『Untitled(2019)』
サイズが縦90cm✕横69.2cmと2021年時点で最大サイズの作品(同サイズで別作品あり)。こちらも人気のブルーが使われており、このKYNE girlの特徴であるちょっと不機嫌そうな顔になぜか惹かれてしまう。不機嫌そうな顔なのになぜか神秘さを感じずにはいられず、探求心がくすぐられる。
僕が初めてKYNE作品を見たのもこの作品。
④『Untitled N(2021)』
2021年にルイ・ヴィトンとのコラボで一躍有名になった村上隆のギャラリー「カイカイキキギャラリー」で行われた個展で展示された作品。いままで女性単体しか描いてこなかったKYNEさんが女性を2人を描いた始めた初めての作品。
この個展に僕は3回ほど行ってきた。女性の存在感と背景色によって変わるひとつひとつの表情に時間を忘れるほど見入ってしまい、何度も行く予定はなかったのに開催中、3回も足を運んだ。
KYNEの作品の魅力
KYNEさんを知ったのは2020年とごく最近。渋谷にできた宮下パークのギャラリーで個展「KYNE TOKYO2」が開催されるというネット記事を見たのが最初である。
ミヤシタパークの前で振り返る女性とモノトーンで描かれながらKYNEブルーともいえる少し冷たさを感じるような青が都会の街並みとマッチしているその作品に、パソコンを通して僕はしばらく目が離せなくなっていた。
「冷たさを感じる」といったが、初めて見たときは「なんて仏頂面なんだ!」と思った。こんな子が実際に自分の前にいたとしたら「なんだコイツ」と思うだろう。思うだけならまだマシかもしれない。もし男だったら手が出そうである。
しかしKYNEさんの作品の女の子たちはそう感じさせない。二次元だから言っているわけではない。
仏頂面でありながら、なぜか神秘さを感じさせてくれるのだ。冷たいようで何か心の奥を見られているかのような、そんな緊張感を味あわせてくれる魅力がKYNE作品にはある。
80年代の女の子を彷彿させるが決して古くない。現代にいる都会的な冷たさを持つ女の子なのである。新世紀エヴァンゲリオンでいう綾波レイのような神秘さといえば分かってくれるだろうか。
冷たさだけでなく、その瞳の奥に潜むものをこじ開けてみたくなるのだ。
KYNEの作品購入するには
2018年の11月に開催された国内最大のSBIアートオークションで、予想落札価格40〜60万円に対し、なんと500万円超えで落札され、そのときに出品された他の3作品も予想価格の10倍超えで落札された。
それほど人気があるKYNE作品。100枚限定のシルクスクリーンなどは常に抽選によって行われ、倍率がとても高いことで有名。
そんなKYNEさんの作品はどうやって購入することができるのか。
KYNEのプライマリーはGALLERY TARGETとON AIR
アート作品の販売ルートとして、プライマリー(一次販売)とセカンダリー(二次販売)がある。プライマリーは作家と契約を結んでいるギャラリーを指し、セカンダリーはアートオークションやセカンダリー専門のギャラリーなどを指す。
ちなみにヤフオク!やメルカリなどのフリマもこのセカンダリーに分類される。
KYNEさんはGALLERY TARGETに所属しているので、GALLERY TARGETがアートフェアに出展した際やKYNEさんが運営する福岡のアトリエ兼ショップのON AIRにて作品を購入することが可能。
また、2021年に村上隆さんのカイカイキキギャラリーにて個展が開かれていたが、その村上隆さんがプロデュースするショップのZingaroで2020年11月〜2021年4月まで版画作品が販売されていた。
KYNEのセカンダリーとして銀座 おいだ美術など
セカンダリーとしては、専門のアートギャラリーでの購入がいま現在でも購入が可能。オンラインでも購入できるところでいうと、有名なのは東京・銀座の「おいだ美術」。
作品や時期によって価格は変わるが、だいたいは80〜200万円ほどでシルクスクリーンを購入することができる。
ニセモノを掴まされず、ちゃんとしたギャラリーから買いたい人はこういったアートを取り扱っている専門のギャラリーで購入するといいだろう。作品を実際に見たい場合は、事前にギャラリーへ連絡することを忘れずに。
アートギャラリーは基本的には倉庫で保管されており、飛び込みで行っても作品は展示されていない。自分も始めてアートギャラリーに行った際に「ネットで見た作品は置いてないのか」と聞いたら事前に連絡するものだと言われ、ちょっと恥ずかしい思いをした。
他にはヤフオクやメルカリなどでも販売されていることが多いが、ニセモノやトラブルなどもあるので注意が必要。決して安いものではないので、自己責任で購入してほしい。
KYNEの作品を売るには
KYNEの作品を売りたい場合、気になるのは販売価格。
ミライカ美術では買取価格を表示しており、100万円から高いものでは350万円で買い取ってくれる作品までさまざまある。KYNEの代表作であるコーヒーを飲むショートカットの女性や、人気の青色が主体の作品などが高価格で買い取りされている。
ちなみにアートは「文化的な価値」のほかに「資産的な価値」を持っている。アートは金融資産や不動産と同じなのである。飾りもしないアートを沢山購入している金持ちを見て、昔は「見栄のために購入しているのか」と思っていたが、決してそうではない。
評価が上がるまで長期的に保有することで、資産価値を上げているのである。ただ株のように今日買って明日売るものではなく、買ってから5〜10年のスパンで売るものである。そのため、プライマリーで作品を購入する際に作家によっては「一定期間は所有する」という同意書へのサインをお願いしているところもある。
またヤフオクやメルカリなどで売ることは大抵の場合、価格を落として売ることになる。それはアーティストや作品自体の価値を下げることになるのでオススメはしない。アートを売買することは禁止されているわけではないが、モラルやマナーを持って売買はおこなうようにしよう。
KYNEとadidasなど、有名ブランドとコラボレーション
KYNEさんはCDジャケットのイラストなどを手掛けるほか、大手アパレルブランドとのコラボ作品も多く発表している。
最近ではadidasの人気スニーカーSTAN SMITHとコラボした。左右で異なるカラーを取り入れたKYNEカラーが特徴的なブルーを採用している。
こちらはアディダス アプリのみで先行抽選販売を現在行っている。6月18日(金)16:30が締め切りなので、欲しい方はお早めに!
抽選受付:6/9 (水) 17:00 ~ 6/18 (金) 16:30
当選発表:6/18 (金) 17:00
詳細はこちら:https://go.adidas.com/ihha/stansmithkyne
⇒抽選は終了(2021年6月19日追記)
この他にも、2020年にはデザイナー清永浩文が手がけるファッションブランド「SOPH.(ソフ)」とのコラボレーションが発表され、2019年には「MOUSSY(マウジー)」とのコラボが発表された。
どれも現在では入手困難になっており、フリマサイトやオークションでは高値で取り引きされている。今でも都内を歩いているとこのSOPH.とのコラボTシャツはたまに見かける。
KYNEが好きなのか、ただ単純にそのTシャツのデザインが好きなのか分からないが、KYNEさん好きならちょっとコーヒーでも飲みながら話したい!という衝動にかられてしまうが、いきなり話しかけてもナンパ目的と思われるか危ないヤツだと思われるのでグッと我慢している。←なんの話だ
KYNEってどんな人?
KYNEさんの帽子にマスクをつけており、素顔をネット上で見ることはない。しかし、インタビューは多くの媒体で見ることができる。
作品についてや制作過程について、そして歩んできたストーリーなど。私が紹介するより本人の言葉を読んでもらえると人柄などが伝わってくる。とても人間らしく、素直な人で共感が持てるので是非とも読んでほしい。
いくつかここに過去のインタビューのリンクを掲載させていただく。
ON AIRをオープンさせたKYNEとNONCHELEEEのインタビュー
2020年『KYNE TOKYO 2』開催時のインタビュー
2021年『KYNE Kaikai Kiki』開催時のインタビュー
KYNEをチェックする
KYNEさんの最新情報を得るならInstagramとTwitterである。本人がアップしているので最新の情報を得るにはここが一番だ。いままで発表した過去の作品も全てではないが、Instagramで見ることができる。
6月の予定だったミヤシタパークのオープンは7月末に pic.twitter.com/dYZvRmZGmq
— ROUTE202BOY (@route3boy) December 31, 2020
公式サイトでも過去の作品はもちろん、ショップで抽選販売もやっていたりする。
KYNEさんのことや作品について、イチから知りたいといった方向けにざっくりで申し訳ないが書かせてもらった。この記事を見て少しでもKYNEさんを知り、多くの人に広まってくれたらと思う。