「戦争映画」と言っても色々なジャンルがあります。
涙なしでは観ることができない感動もの、歴史をもとにしたもの、近未来的なもの、ファンタジーなものなど、さまざまな映画がありますよね。
今回はその中でも「事実に基づいた話をベースに作られた戦争映画」を紹介します(Netflix)。
事実だからこそ、リアルで残酷な描写もたくさん登場します。
でも、だからこそ目が離せない。そして、知らなければいけない。
「こんなにも壮絶な環境で戦う人たちがいるんだ」と心を掴まれること間違いなしです。
軽くネタバレを含みます。ご注意ください。
実話だからこそ刺さる、リアルな戦争映画5選!
ホース・ソルジャー
ー あらすじ ー
911アメリカ同時多発テロ発生直後、10月16日のウズベキスタンから話が始まります。
場所はアフガニスタン国境から156km離れた米軍基地。
ネルソン大尉が率いる12名のチームに課せられた任務は「タリバンと敵対している将軍ドスタムに協力をあおぎ、タリバンの拠点へ攻め入ること」。
たった12人で敵地アフガニスタンに降下したネルソン隊。現地で工作活動をするCIAに誘導され、無事にドスタム将軍に会えたのもつかの間、右も左もわからないアフガニスタンの山岳地帯でドスタムに主導権を握られたまま共に行動をします。
「ドスタム将軍からの信頼を得られなければ、タリバンの拠点へ行くことはできない」
慣れない馬に乗り、ドスタム兵と共にタリバンと交戦しては死地をくぐり抜け、最終目的地であるタリバン拠点へ到達する…。
見どころ①最新技術を持ったアメリカ兵の移動手段が「馬」
タイトルに「ホース・ソルジャー」とある通り、移動手段が「馬」なんです。しかも、敵とも味方ともわからないドスタム将軍に渡された、たった6頭の馬。
地球上で「最新鋭の戦争技術を持っているアメリカ軍」が、現地の人間を頼るしかなく、「馬」でしか攻略ができなかったという事実。
「何か他になかったの!?」と思ってしまうけど、それは米兵も同じ。
だって指令は「ドスタム将軍から信頼を得てタリバン拠点に向かう」だったのに、まさか馬に乗っていくなんて、誰も想像していなかったから。
見どころ②911テロ直後の「アメリカ最初の反撃」だった
「911以降、アメリカが直接攻撃をするのは君たち12人が最初だ」という作中のセリフにある通り、なんとこれが最初の反撃なんです。
たったの12人で馬に乗り、何の情報も無いなか手探りで進んでいく。こんなことをアメリカが実際にやっていたなんて、すごく衝撃でした。
それだけアフガニスタンやタリバンに関する情報が少なかったということなんでしょう。
「最初の反撃だからこそ、絶対に負けてはいけない。必ず勝たなければいけない。」
映画の前半は、911直後のアメリカ軍の心理描写が多く描かれています。
見どころ③タリバンの支配が再度始まった「今こそ」観るべき
2021年9月26日現在、アメリカがアフガニスタンから撤退し、タリバンが再度アフガニスタンを支配・占領している今だからこそ、観てほしい作品です。
この映画は2001年10月に起きた事実を基に描かれており、今からちょうど20年前のリアルです。
少しネタバレしてしまうと、「映画の最後は、一旦ハッピーエンドになる」んです。要は任務が完了して、無事に兵士たちが家族のもとへ帰る姿が描かれている。
だけど、2021年の今、アフガニスタンはどうなっているでしょうか。
今現在のアフガニスタン情勢を考えると、映画の捉え方が変わり、すごくすごく、複雑な心境になる作品です。
ローン・サバイバー
ー あらすじ ー
2005年のアフガニスタン。アメリカの対タリバン紛争で最大の悲劇ともいわれた「レッド・ウィング作戦」が基になった映画です。
任務を行うのはアメリカの特殊部隊「ネイビー・シールズ」の4人。タリバンで残虐行為を続ける指導者の殺害を目的にし、4人で拠点近くの山中へ潜伏。目標を確認したら衛星電話で仲間の海兵隊から支援を受ける予定でした。
しかし潜伏中にタリバン一派とも思える羊飼いの少年に出くわしてしまう。やむなく少年を逃したことから、大勢のタリバン兵に居場所がバレ、100名以上のタリバン兵にめった撃ちにされてしまう。
見どころ①絶対に逃げられるはずがない窮地の連続
ずっと血まみれの作品です。最後までずっとピンチ、全く休まらないです。
作品のほとんどが「崖下に追い詰められた激しい戦闘シーン」で構成されていて、今回ご紹介する映画の中で、痛い描写が最もリアルな作品です。
色んな戦争映画を観てきましたが、傷や血の描写のリアルさはトップクラス。(苦手な人はご注意を)
指を吹き飛ばされ、足を撃ち抜かれ、顔中が銃槍でぐちゃぐちゃになっていても戦う4人。
「やっと助けが来た!」と思ったら救助のヘリも撃ち落とされ、他のヘリも退散してしまう。
もう、ずっとずっと、死地です。
見どころ②米兵を助けたのは、アフガニスタンの村人だった
映画の後半30分は、兵士をかくまってくれた小さな村での話になります。(ちなみにココでも痛い描写だらけで視覚的な休憩はありません)
最終的に1人だけ生き残る作品なんですが、生還できたのが「現地の村人に助けられたから」なんですよね。
しかし全然ハッピーエンドじゃない。これが、アフガニスタン情勢のリアルな部分です。
米兵を助けた村は、もちろんタリバンの標的になる。それなのに、助けるんです。命を張って。
「なぜ俺を助けるんだ!?」と何度も何度も叫ぶ兵士の姿が目に灼きついています。
ブラックホーク・ダウン
ー あらすじ ー
舞台は1993年、東アフリカのソマリア。部族間の争いで30万人以上の民間人が餓死したとされる最低最悪の内戦でおこった悲劇の話です。
国連の介入によりアメリカ海兵隊2万人が出動し、一時的に秩序が回復するも、海兵隊の撤退を機に内戦の主導者アイディード将軍が国連に宣戦布告。国連との戦争が始まります。
ある日アイディード派の重要人物が集まる場所をつきとめた海兵隊は、陸路で市街地を走り、ブラックホークで空の援護を受けながら、標的の捕獲と、捕虜の収容に出動する。
「30分で終わる簡単な任務」だったはずなのに、民兵の奇襲でブラックホークが墜落。そこから歯車が狂い出し、多くの死傷者を出す惨事になっていく…。
見どころ①「内戦に他国が介入する」というリアル
映画のスタートで、アイディード派に武器を売買する商人を捉えるのですが、その商人が発した言葉にハッとさせられます。
「ここに(国連が)来たのは間違いだ。これは内戦。我々の戦いだ」
事実、このアメリカ(国連)の介入は失敗に終わるんです。
映画では終始「一般人が武装した民兵」が米兵を襲撃したり、暴行する姿が描かれます。
ソマリアの悲劇的な内戦を停めるために来たはずなのに。
主導者であるアイディード将軍を捉えれば内戦は終わると思っていたのに。
それが罪のない民間人を救うことに繋がると思っていたのに。
アメリカの司令官は言います「ここ(ソマリア)はイラクじゃない。もっとややこしい」
いや、ほんとに…。
見どころ②作戦が失敗し、文字通り「逃げる」アメリカ軍の姿
ブラックホークが撃墜されたことをキッカケに、空からの援護を失い、一気に計画が崩れるアメリカ軍。チームは分断され、強固な車両隊も民兵によって次々と撃破されていきます。
ここからは、米兵も民間人も民兵も、人がどんどん死にます。まさに泥沼、死闘です。
最終的に生き残った米兵を救うべく、基地から増援が来て車両隊で脱出するのですが、これがまさに「敗走」。背水の陣すらない。命からがら、市街地から走って逃げるんです。
救助にきた車両隊にも乗り切れず、足で走って車を追う米兵たち。
体力の限界で倒れる者、背後から撃たれる者。
何も達成できなかった「完全なる失敗」です。
ジャドヴィル包囲戦
ー あらすじ ー
時代は1961年、第二次世界大戦が集結したコンゴで鉱物資源の争いが起こっている時の話です。主役はアイルランド兵。国連平和維持活動をするアイルランド陸軍部隊です。
アイルランド陸軍中隊長のクインランは、カタンガ国ジャドヴィル近郊にある国連駐屯地で部隊の指揮をすることに。しかし、とあるキッカケ(※)で現地で権力を握る「チョンベ政権」に敵対視され、周囲を囲まれてしまいます。
食料も弾薬もほとんど用意がない駐屯地で、実戦経験とぼしいアイルランド兵を指揮しながら、なんとか籠城して戦うクインラン。
しかし本部に増援を要請してもはぐらかされてばかりで、いっこうに増援が来る気配がない。そして最終的には誰も電話に出なくなり、クインランは「本部に切り捨てられた」ということを悟ります。
※あらすじにどこまで書こうか迷いましたが、「ジャドヴィルでの戦闘が始まるまでの解説」をすると非常に長くなるため割愛しています。
見どころ①政治要素が強く、各国の関係性が面白い
映画スタート時から政治の話ばかりで、全くついていけず、2回観てまだ理解できず、wikipediaで政治背景を調べてやっと納得した作品です。
コンゴが舞台なのに、国連からアイルランドが入っているし、何故かコンゴ政権に味方するフランス傭兵が出てくるし、ベルギー人は出てくるし、インドの平和維持軍は出てくるし…という具合で、たくさんの国が関わる作品で結構難しい(アメリカ映画に見慣れすぎてるからそう思うだけかも)
ジャドヴィルで包囲され、戦闘が始まってからも幾度となく政治が介入し、それに振り回されるクインラン隊の不安な心理が描かれるのですが、これが面白い。
見どころ②米兵みたいに屈強じゃない。細身アイルランド兵のチーム戦
描かれているアイルランド兵は、みんな細身でスラリとしており、「屈強な兵士像」から大きくかけ離れています。
実際のクインラン隊がほとんど実戦経験のない兵士で構成されていたというのも加味されているかもしれませんが、それでもかなり細身で、まるで一般人。
一見頼りなさそうに見える兵士たちが、知らぬ間に敵に包囲され、増援も見込めないなか、アレコレ工夫し「チームで戦う」のが面白いですね。
しかも物資がつきて銃弾もなくなり、最終的に敵に白旗をあげて降伏するんですが、降伏してからも政治介入モリモリ。「現実が1番残酷だな」と思わされる作品です。
【Netflixオリジナル】WWⅡ最前線カラーで甦る第二次世界大戦
ー あらすじ ー
第二次世界大戦中の「実際の戦禍の映像」をカラーで復元させた、全10話完結のドキュメンタリー映画です。「事実をベースにして作られた映画」ではありません。
エピソード1はダンケルクの戦いから始まり、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、ナチス・ドイツ軍のスターリングラード攻防戦、Dデー、ホロコーストと続き、広島の原爆投下までが描かれています。
見どころ①「 実際の映像 」に勝る迫力は無い
実際の戦争を「迫力」と形容していいものか悩ましいですが、あえて「迫力がすごい」と言わせてください。
戦闘シーンの迫力はもちろんのこと、民間人や兵隊の細かな表情までクッキリと映っており、フルカラーで再現されたことにより、まるで自分がその時代にいるかのような錯覚になります。
焼かれ崩落する市街地、国境まで長く続く戦車の道、泥道を大荷物を抱え走る兵士、ボロボロの戦艦で死地へ旅立つドイツ兵…。
「よくこんな映像残っていたな」と呆然とします。
見どころ②日本が「世界にどう観られていたか」を知る
このドキュメンタリーは、Netflixオリジナル作品なので、もちろんアメリカが制作したものだろうと思います。(内容的にイギリスも監修してそうだけど詳細は不明)
つまり広島の原爆も、日本人目線で描かれていない。
終戦間近、敗戦が決まっているのに特攻する日本兵に対する各国の意見が本当にリアル。
ここで言及するのは避けますが、知るべきだと思います。
作中では、実際の映像にナレーションが付く形で進んでいきます。
それに加えて各国の戦争評論家や学者、歴史家たちが度々登場し、わかりやすく当時の状況を説明してくれます。
【余談】日本人こそリアルな戦争を知ったほうがいい
日本は第二次世界大戦で負け、憲法第9条のとおり戦争をしない国となりました。
だからもちろん、私も含め、多くの日本人は戦争を知らずに育ったし、心のどこかで「日本が戦争に加わることはないから安心」だと思っていたりする。
でも、今この瞬間もどこかの国で戦争は起こっていて、紹介した映画のように「国連が介入し、自国に直接関係がなくても戦っている兵士」がいるんですよね。
この事実を「日本は戦争しないから関係ない」で済ませていいのか、と思ってしまう。
(だからといって何をしていいかもわからないからモヤモヤするんだけども)
今回ご紹介した作品を観るだけでも、「自分がいかに何も知らないか」を知ることができます。
まずは知ることから始めてほしいなと思います!
さいごに
「事実をもとにした戦争映画」を5つご紹介させて頂きましたが、いかがでしょうか。
テーマ的になんだか最後は重い感じになっちゃいましたが、どれも1つの映画として面白いものばかりです。
長引く自粛生活のお供に、まずは1本観てみてください♪
今回ご紹介した作品は、DVDで販売されているものもあります。
「Netflix加入してないよ」」という人はチェックしてみてくださいね!