近頃居酒屋や酒屋、スーパーなどでも見かけることが多くなったクラフトビール。普通のビールと並んでいることが多いのですが、中にはおしゃれでスタイリッシュな見た目をしているものもあるため、気になったことがある人は多いのではないでしょうか。
とはいえクラフトビールを飲んだことがない人は、なかなか手を出しにくいのも事実。筆者もそうだったのですが、ついつい冒険せずにいつものビールを選んでしまいがちです。
そこでこの記事ではクラフトビールが一体どのようなものなのかを説明するとともに、筆者おすすめのクラフトビールやぜひ読んでほしいクラフトビールにまつわる本などを紹介します!
クラフトビールってなに?普通のビールとは違うの?
近年居酒屋やスーパーなど、いろいろなところで見かけるようになったクラフトビール。缶や瓶で売られていることの多いクラフトビールは、アサヒやキリンなどのいわゆる“普通のビール”と何が異なるのでしょうか。
ここではクラフトビールの定義や、地ビールとクラフトビールの違いについて見ていきましょう。
クラフトビールの定義
クラフトビールを見かける機会は増えたものの、その定義を知っている人はあまり多くないのではないでしょうか。「クラフト」という言葉を直訳すると「工芸、手作り」といった意味合いになりますが、実際にどのようなものをクラフトビールと呼ぶのか、気になりますよね。
国内におけるクラフトビール人気のさきがけとなった「よなよなエール」の公式サイトでは「クラフトビールとは、小規模な醸造所がつくる、多様で個性的なビールのこと」と定義づけられています。もちろんこれには諸説ありますが、「他では見ることのできない特別なビール=クラフトビール」と考えてもいいかもしれません。
クラフトビールと地ビールの違い
実は現在のブームが巻き起こる前に、クラフトビールは1度別の名前で一世を風靡しています。1990年代半ばに酒税法が改正されたことをきっかけに、日本各地に町おこしの一環として小さな醸造所が数多く出現し、そこで大ブームとなったのが「地ビール」でした。
当時はまだ技術が未熟な醸造所も多かったため、味の良さというよりは「お土産」としての一面を担っていた地ビール。しかしブームが去ったあとでも一部の醸造所は技術やノウハウを磨き続け、のちに「クラフトビール」として新たに注目されることになったのです。
クラフトビールはどうやって作られる?
ビール愛好家からも高い人気を得ているクラフトビールですが、どのように作られているのでしょうか。ここではクラフトビール作りに必要な原材料と、作り方について詳しく見ていきましょう。
クラフトビール作りに必要な原材料
クラフトビール作りに必要な原材料は普通のビールと同じく、「モルト・酵母・ホップ・水」の4種類。それぞれがビール作りにおいて、以下のような役割を果たしています。
モルト
発芽した大麦のことをモルトと呼び、ビールを発酵しやすくする役割を持っています。モルトの乾燥具合や焙煎時の温度によってビールの風味や色味が大きく変わるので、ビール作りにおいてとても重要な存在ですよ。
ホップ
ビールのパッケージ上で、「ホップの香り」という表現を見たことはありませんか?ホップはハーブの一種で、ビール作りの際は受粉前の雌花のみを使用します。ホップの使用でビール特有の苦味や風味が生まれるだけでなく、なんと雑菌の繁殖を抑える効果もあります。
酵母
パンづくりなどでも使われる酵母は、後ほど紹介するビールの「種類」を作り分けるのに重要な役割を果たします。
水
ビールの9割以上は水で出来ているので、水の質や性質がビールの出来栄えを左右すると言っても過言ではありません。一般的にエールには硬水、ラガーには軟水が使われることが多いです。
クラフトビールはこうやって作る!
クラフトビールの作り方は普通のビールとどう違うのか、気になりますよね。ここではクラフトビール作りにおけるおおまかな流れを説明します。
①原材料選び
クラフトビール作りを担うブルワー(醸造家)はあらかじめ作りたいビールのイメージがあるため、それに合わせてホップや酵母をはじめとする原材料を選定していきます。
モルト・ホップにはさまざまな種類があり、少し配合の比率が違うだけでも味わいや香りがまるっきり異なるので、少しずつ調整しながら理想の味を作り上げます。
②仕込み
使用するモルトやホップが決まったら、いよいよビール作りの開始。モルトを機械で細かく粉砕したら、ビールの元になる「麦汁」を作っていきます。
ビールは苦いイメージがあると思いますが、麦汁自体はとても甘く、まるでメープルシロップのような風味!そこにホップで苦味や風味が加わることで、徐々に良く知る「ビールの味」に近づくのです。(この時点ではまだまだノンアルコール)
③発酵・貯酒・熟成
出来上がった麦汁を発酵させるため、タンクに移し替えたあとにようやく酵母をイン!酵母が加わることにより麦汁の糖分が和らぎ、アルコールと炭酸ガスが生まれます。
酵母によって発酵期間は異なりますが、短いもので3日程、長いもので10日程かかることが多いです。その後発酵したビールをさらに貯蔵タンクに移して第二発酵させると、2週間から1か月ほどでビールが完成します。
④充填
長い熟成期間を終えたビールは、不要な成分を取り除くために濾過が行われます。(最近では無濾過のクラフトビールも多いです!)濾過が行われたクラフトビールは順次缶や瓶に充填され、ようやく私たちの元へ届くのです。
クラフトビールは大きく分けて7種類
一口で「クラフトビール」といっても、実はたくさんの種類があります。ここではその中でも代表的な7種類について、1つずつ説明します。
ピルスナー
「アサヒスーパードライ」や「プレミアムモルツ」などをはじめとする大手メーカーのビールのほとんどが、このピルスナー。美しい黄金色と爽快な喉越しが特徴です。19世紀半ばにチェコで誕生したピルスナーは、世界のビールの8割を占める最も王道のビールだと言われていますよ。
ペールエール
イギリスで誕生したペールエールは、淡い色合いながらピルスナーに比べると力強いホップとモルトの香りが特徴。普通のビールと比べると濃く感じるかもしれませんが、クラフトビールの入門にはおすすめです!ペールエールが生まれた当時は濃い色のビールが主流だったため、色の薄いこのビールは「ペール=淡い」という名前が付けられました。
IPA
ピルスナーやペールエールと並んで、クラフトビールの中でも高い人気を誇るのがこのIPA(インディアペールエール)。他のクラフトビールと比べると格段に苦いのですが、その苦味と柑橘系の爽やかな香りの虜になる人が続出しています!
IPAはかつてイギリスからインドにビールを運ぶ際に防腐剤代わりにホップを大量投入してできあがったことから、「インディア」と名付けられたという逸話も。1度飲むとクセになるIPA、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
スタウト
スタウトは、いわゆる「黒ビール」と呼ばれるもので、アイルランドのギネスビールなどが有名ですね。口に含むとカラメルやナッツのような香ばしい香りが鼻を抜け、たまりません。
黒いので苦いのかと思いきや、実は全然そんなことはありません!どちらかというと甘みがあり、意外にもクラフトビールの中でもすっきりと飲みやすいですよ。(筆者はスタウトが1番好きです)
ヴァイツェン
小麦から作られており、濁った色合いが特徴的なドイツ発祥のヴァイツェンビール。バナナやマンゴーといった南国のフルーツを連想させるようなフルーティな香りが特徴で、苦味もほとんどないため、クラフトビール初心者でも挑戦しやすいです。
クラフトビールの中でも特徴的な香りを持っているものが多いため、根強いファンも多いのがこのビール。飲みやすい一方でガツンとした苦味を求めている場合は、少し物足りなさを感じてしまうかもしれません。
フルーツビール
フルーツビールはその名の通り、原材料にレモンやフランボワーズなどのフルーツを使用したベルギー発祥のビールです。色や味わいは入れるフルーツによって異なるため、色々な楽しみ方ができるところは嬉しいポイントですよね。甘みが強いものが多いため、食後酒としてデザートとともに楽しむのもいいかもしれません。
バーレーワイン
一般的なビールの度数が5%前後なのに対し、なんとバーレーワインの度数は8〜12%前後。ビールでありながら高い度数を誇るため、「バーレーワイン」という名前が付けられました。ビールでありながらも非常に香り高いため、締めのビールとしてワイングラスでゆっくり楽しむのがおすすめですよ。
ぜひ飲んでほしい筆者おすすめの国産クラフトビール
ここではぜひ飲んで欲しい、筆者がおすすめする国産のクラフトビールを紹介します。いずれも比較的手に入りやすいので、気になる場合はぜひチェックしてみてくださいね。
一意専心:京都醸造
一意専心は2015年に事業を開始した京都のブルワリー・京都醸造の、定番クラフトビール。ベルギーとアメリカのビールの特徴が絶妙にブレンドされたこのビールは、IPAらしい飲みごたえがありながら、パッションフルーツのような華やかな香りが口中に広がります。
なんとこのビールは2021年にレシピを一新したばかりで、これまで以上にバランスが良くなった印象です。ちなみに一意専心は、後ほど紹介する漫画『琥珀の夢で酔いましょう』にも登場していますよ。
Lupulin Nectar:Y.MARKET BREWING
2014年に名古屋市内唯一のブルワリーとして誕生したY.MAEKET BREWINGの看板商品であるLupulin Nectar。アルコール度数は7.5%とビールにしては少し高めですが、まるでネクターを飲んでいるような柔らかい口当たりが魅力です。
大量のホップが使用されたIPAなので苦いのかと思いきや、そこまで強い苦みは感じません。代わりに口に含んだ瞬間に感じるのは、ピーチやマンゴーなどのフルーティーな香り。とても飲みやすいので、ビールが苦手な人もぜひ1度試してみて欲しいです!
ラズベリーチョコレートケーキスタウト:エチゴビール
今回変わり種として紹介したいのが、日本有数のブルワリーであるエチゴビールが期間限定で販売していたラズベリーチョコレートケーキスタウト。筆者の大好物であるスタウトでありながら、このビールは普通のものとはひと味もふた味も違うのです。
「パッケージもポップすぎるし、名前も長いし…」と不安に思いながら一口飲むと、「なるほど!」と思うような味わい。その名の通り、本当にラズベリーチョコレートケーキの味がします!比較的甘めの味わいなので、デザートビールとしてもおすすめですよ。
ビールについて知りたい!そんな時におすすめの書籍
クラフトビールについて知りたいと思った時に一番手っ取り早いのは、「色々なクラフトビールを飲んでみること」です。しかし同時にビールに関するより深い知識があれば、より楽しめると思いませんか?そんな時に筆者がおすすめしたい書籍はこちらです!
『ビールは楽しい!』
『ビールは楽しい!』はイラストを交えた説明が分かりやすいと話題の実用書、「○○は楽しい!」の第四弾として発売されました。ビールの基本情報や製造過程が視覚的に説明されているだけでなく、ビールに合う食べ物なども幅広く紹介されています!
読むとビールがもっと楽しめるような情報が満載なので、これからビールについて知りたい場合は「ビールの入門書」として一冊持っておいて損はありません。
『琥珀の夢で酔いましょう』
筆者がクラフトビールにハマるきっかけになった漫画『琥珀の夢で酔いましょう』。京都の路地裏にひっそりと佇むクラフトビアバーを舞台に繰り広げられるこの作品には、実在するブルワリーやクラフトビールが多数登場します!先ほど筆者がおすすめのビールとして紹介した京都醸造の一意専心も、1巻に登場しています。
ストーリーの面白さは言うまでもないのですが、合間に挟まるクラフトビールについてのコラムも非常にためになります。作中に登場するクラフトビールはみな、「飲んでみたい!」と思えるようなものばかりなので、ぜひ1度読んでみてくださいね。
まとめ
最近では国内でも小規模な醸造所が増えてきており、さまざまな味わいが楽しめるクラフトビール。たくさんある種類の違いが分かれば、もっと楽しめます!
これまでクラフトビールを飲んだことがない人は、これを機にぜひチャレンジしてみてくださいね。